論文を書くには その4
まずは、「本文」の中でも、書きやすいところからはじめていくと筆が進みやすいのではないでしょうか。おすすめは、Material & MethodとResultです。(症例報告ならばCase Presentation)
ここはドンドン筆が進む方が多いでしょう。なぜなら事実を淡々と書くしかない部分だからです。
Material & MethodとResultに比べると、Introductionは歴史的な背景や臨床上、あるいは研究上で問題になっている部分の記述が必要です。
さらに、Discussion部分では、自分の意見をサポートするための補強として文献を引用して論ずる必要があります。また、反対意見について示唆することや、今回の研究の限界(limitation)について述べる必要もあります。
また、症例報告の執筆に悩む先生方は多いかもしれません。実際、症例報告ならば、〇〇歳の男性が、☓☓を主訴に来院し、バイタルサイン、既往歴、内服薬、家族歴、その後に詳細な現病歴など・・。
さらには、身体所見、採血、採尿、画像診断、治療した内容など、ざっとあげただけでも12項目に及びます。そして最終的にはどうなったかが必要です。骨子はこれだけです。
症例報告を書くためには、臨床経過がわかっていなくては書けません。そうすると、前項で述べた臨床経過の表が大事になってきます。
何を参考にすれば良いのかと悩む先生方もいるかもしれません。これはズバリ、New England Journal of MedicineのCASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITALがおすすめです。
これはいつ読んでもワクワクします。
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症例報告で抜けやすい4つのポイント
次は、症例報告で、書いておいてほしいものの抜けやすい部分を紹介します。
<症例報告で抜けやすい部分>
1) 人種(海外雑誌に投稿するときは必須)
2) 身長、体重
3) 検査値の単位(論文によっては、単位が指定されていることがある)
4) 身体所見の陰性所見
人種によって、罹患率が異なる病気もあります。
身長・体重は、基本的で大事なパラメーターです。しばしば抜けていることがありますが、薬の投与量などの点からも大事なので、書いてあると好ましいでしょう。
そして、検査値の単位が抜けていると検査値となりえません。論文によって、単位が指定されていることもあるのでしっかりと確認しましょう。一般的ではない検査値のは基準値も書いておくと親切でしょう。
特に、大事な部分として、身体所見の陰性所見があげられます。大した所見が無いと、The patient showed no particular findings.の一言で済まされているものがあります。
しかし、例えば「胸部に異常所見なし。」と記載しているものと、「胸部に変形や傷跡はなく、皮疹なども認めなかった。胸部にはI音、II音は聴取するが、III音、IV音は聴取せず。また、心雑音も認めなかった。肺野にはwheezing、coarse crackle、fine crackleいずれも認めなかった。」と表記されているものでは印象は大きく違うでしょう。やはり、後者が丁寧に診ている印象をうけるのは明らかではないでしょうか。
だからこそ、きちんと書いておくべきなのです。もし査読者から「こんなに書かなくて良い」と言われたら、その時点でNo particular findingsにすればいいわけです。
さらに、臨床経過上、「最初から異常所見があったんじゃないの?」というツッコミに対しての予防策になります。NEJMのCase Recordでは、このあたりがとっても上手に省かれています。やはりそこは最高峰の論文だと感じるところです。
今回のまとめ
1) 論文の種類によって型がある
2) 抜けやすい部分は、身長、体重、検査値の単位、陰性所見の記載
(m3参照)